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とくダネ!での精子提供者インタビューに関して

とくダネ!というTV番組で精子提供者のインタビューを扱った放送がされ、話題になっています。報道の反応としては、精子提供者の飄々とした態度に反感を抱いている方が多数Twitterで見受けられました。この他に中立的な意見はありましたが、肯定的な意見はほぼありませんでした。

精子提供者の一人として、私はこの番組が悪質なやらせであると断言します。以下、その理由を述べます。

理由1:「26歳で43人」という数字の非現実さ

「26歳で43人の子どもを授かった」としていますが、これは数が非現実的な程に多いです。この方は4年間提供をしているとのことでした。そうすると、一年間で約10人の子どもを作ったことになります。

サラリーマン勤めをしていて、一年間に10人というのはかなり難しいです。私もサラリーマン勤めのときは、年に3〜4人が限度で、それより下回る年も多かったです。私のサイトでは、去年は25人の方がお子さんを授かりましたが、一年間にここまで多数の人数を扱えるようになったのは私が独立して自由な時間が多く手に入るようになったからです。

実際に私のサイトには「他の方に依頼していたが、日程が合わなかったので精子提供.com に変えました」と言って来られる方がよくいらっしゃいます。たとえば排卵日が木曜日のとき、排卵日二日前は火曜日になり、この日に残業があれば次の月まで提供を延期することになります(深夜の提供を望む方はこれまでいたことがありません)。インタビューを受けた人はサラリーマンなので、残業もそれなりにあるでしょう。

たまたま残業がない日に排卵日が重なり、かつその日のアフター5で会う時間が作れ、かつその日の提供で運良く子どもを授かる確率を考えると、「1年で7人」という数字がいかに非現実的かわかってくると思います。

第一、そんなに簡単に精子提供で子どもはできません。20代前半の不妊体質でない人ならともかく、不妊治療の末に困り果ててやってくる人や、30代・40代でやってくる人、仕事等が忙しくてなかなか排卵日前に来られない人もいます。むしろ精子提供の依頼をされる方はそういう「何らかの事情で子どもを授かりにくい人」の方が多数派です。

提供者はWebで募集していたのでしょうが(Webサイトも解説せずに多くの人に提供者の存在を知ってもらうことは不可能です)、それだけ数多くの実績を残していれば、必ず有名になり注目を浴びるはずです。私は日本中の実績のある精子提供者のWebサイトをほぼ全て参考のためにチェックしていますが、とくダネ!の提供者のような方は寡聞にして知りません。

以上の理由により、「26歳で43人」は嘘だと断言します。

理由2:「被提供者や生まれた子どもに思い入れがない」とのはありえない

精子提供者は必ず被提供者(提供を受ける女性のパートナーや家族も含みます。以下同様)や生まれた子どもに思い入れを持ちます。これは感情論ではなく、合理的な理由があります。

まず、日本では精子提供はルール不在の元行われており、適切な規制がないので民間企業が参入できていません。基本的に個人の提供者が無償で(もしくはホテル代など実費を請求して)精子を提供するのがほとんどです。従って「お金を稼ぐために精子を提供する」ということがありません(アメリカでは民間企業による精子バンクがあり、質のいい精子を持つ人が自分の精子を副収入のために提供することがあります)。

そして、理由1で述べたとおり、精子提供を必要とするのは、「何らかの事情で子どもを授かりにくい人」です。そういう方が子どもを授かれるまでサポートをするのは、非常に時間がかかります。また、子どもができないという精神的な辛さから、コミュニケーションの際に配慮が必要な方も多く、精神的にも疲れるボランティアです。

これに加え、精子提供者は、将来のトラブルのリスクを抱えています。子どもは生まれれば終わりでなく、80年は生きます。歯車の掛け違いがあったときに、提供者と被提供者(及びその子)の間でトラブルに発展する可能性もあり、多くの精子提供者はその覚悟をした上で精子提供をしています(たまに、覚悟が足りてない方も見受けられますが)。子どもの出自を知る権利を私が保証しているのは、その覚悟の現れです。

以上を簡単にまとめると、「精子提供は、お金は1円も儲からないし、時間的にも精神的にも非常に大変」なのです。なぜそんなことを精子提供者は行うのでしょうか? 被提供者とその子に思い入れがあるからです

とても大変な思いをして提供をしても、子どもをようやく授かり、「ありがとうございました」とお礼を言ってもらえると、報われた気持ちになります。たまに赤ちゃんの写真を送ってくれる方もいますが、みんなとても可愛く、「生まれてきてくれて良かった」という気持ちになります。その達成感こそが、辛くて実入りのないボランティアを続ける原動力です。

「生まれた子どもや被提供者に何の思い入れもない、DNAが繋がっているだけだ」という発言が出ようはずがありません。とくダネ!の提供者は、先も申し上げたとおり高収入のサラリーマンなのですから、達成感を感じられないのであれば、ハイリスク・ローリターンの精子提供を行うという選択をしないでしょう。

とくダネ!の精子提供者は「典型的な精子提供者」ではありません

最初に述べたとおり、とくダネ!の精子提供者に否定的な意見が集まっています。しかし、そもそもこのインタビューはやらせであり、この精子提供者が「典型例な精子提供者」ではありません。不埒な気持ちで提供をしている提供者が一定数存在するのは残念ながら事実です(そのため、精子提供者を選ぶ基準も記事でまとめています)。しかし、多くの提供者は、自分なりの覚悟と信念を持って、被提供者とその子のためを思って活動をしています。少なくとも適当な気持ちでは長期的に続けられる活動ではありません。

「精子提供者はドライで不誠実だ」「みんな妻に隠してやっている」という印象が広まらないことを願います。私は依頼される方にはできるだけ誠実に対応するように心がけていますし、妻にもこのサイトの存在を含め全て包み隠すこと無く打ち明けた上でやっています。子どもがどうしてもほしいという人はかなり多くの数存在します。GIDやLGBT、無精子症のカップルでそもそも子どもが作れないという方も多いです。その人達を一人でも多く助ける活動がしたいのです。

以上、長くなりましたが、全ての精子提供者と、被提供者、およびその子どものために、悪質な虚偽情報が流布しないようまとめました。本文章はできるだけ多くの人に拡散していただけると幸いです。

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